●全体
●令和3年改正フォロー
●相続
●相続分の指定(902条)は、法定相続分の画一性等に照らし、債権者に対抗することはできない。の
●「共有」(898条)は、「共有」(249条以下)と同義と解される。よって、427条以下の適用を受ける(264条ただし書き)。
●預金債権についても原則として妥当する。しかし、預金債権は現金同様の機能を果たし、かつ遺産分割の調整に資する。実際にも、実務上は、関係者合意の上で遺産分割の対象としている。しかし、定期預金債権には上記は妥当せず、普通預金債権に限る。もっとも、909条の2に注意。
●共有となった遺産から生じた果実(賃料):遺産とは別の共有財産。427条による分割債権。法定相続分による。遺産分割の影響なし。それと同様に性質上可能な債権一般も当然分割。
●財産分離(・い941条)は債権者等の保護になる。
●891条5号の趣旨は、遺言に対する不当な干渉に対し民事上の制裁を及ぼす趣旨。よって、不当な利益を目的としない場合、非該当。
●遺産分割協議と解除:解除(541条)可能か?不可。法的安定性を害する(909条本文参照)。全員により合意解除して再度の遺産分割協議は可能。バランス上、契約自由の原則を優先。
●共同相続人間と884条:原則として適用される。法律関係の早期安定の趣旨が妥当するので。もっとも、相続人ではないことにつき悪意であったり、合理的な理由なしに自らを相続人であると信じている者は保護に値しない。よって、884条の消滅時効の援用権者は、合理的な理由があり善意である者に限られると解される。
●預貯金債権は、相続開始により当然分割されず、遺産分割の対象となる(最決平成28年12月19日(大))。判例(最判平成16年4月20日)は変更された。
●相続放棄の期限(「相続の開始があったことを知った時」から3か月)の例外:「相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又はこれを認知しうべき時」:①相当の理由があり、②相続財産が全く存在しない(積極・消極共に)と信じ、かつ③相続財産の有無の調査への期待が著しく困難であることが要件(判例)。
●具体的相続分は、積極財産を分割する際の基準であり、その計算上、債務は含まない。
●遺贈は、(生前贈与同様)持戻しの対象だが、(生前贈与とは異なり)計算上の持戻しはされず、相続開始時点での財産を構成するものとされる。
●再転相続人(916条):(第二ではなく)第一相続の相続人の地位を承継した事実を知った時から起算(判例)。承認・放棄の選択をする機会を保障する趣旨。
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
●重要条文
●全体
●遺贈:特定遺贈・包括遺贈(964条)。後者には割合的包括遺贈がある。受遺者は、(共同訴訟人とは異なり)登記を共同相続人と共同でしなければならない。
●遺贈の放棄:特定遺贈はいつでも、相続人に対する放棄の意思表示ができる(986条)。包括遺贈の放棄は、共同相続人と同じと解されている。
●遺言・遺留分
●遺留分侵害額請求権は形成権。
●遺留分侵害額請求権の取得時効:侵害額請求により法的安定性が害されることへの配慮(1044条1項前段、●同3項●、1047条1項1号・3号、1048条)をしつつ、要件を充足する侵害額請求については、その請求以前のものを時間的な制約なく認めている(1044条1項後段(●1046条●))。遺留分侵害の贈与後、被相続人死亡までに時効期間が経過した場合、遺留分権利者は事項手段が法的にできない。よって、遺留分請求に対する取得時効は認められない。●条文番号等確認。
●特別受益と遺留分侵害額請求(改正前(最高裁判例)は、旧1044条が903条を準用していたことから、特別受益による贈与も対象となるとしていた。且つ、期間や善意悪意に関わらず、段の事情がない限り、全て参入していた。):新1044条は、期間を10年間、且つ特別受益に限定して認めた。受贈者・受遺者に不測の損害を与えないため(法的安定性)、また日常的な生活費等と区別し難いため(紛争の複雑化回避)。●大幅改正
●共同相続人間の相続回復請求権の適用。趣旨:真正相続人の相続権保護。よって、表見相続人か、共同相続人かによる違いはない。よって、適用あり。もっとも、侵害者が悪意又は相続権に合理的根拠がない場合は適用なし(消滅時効の適用なし)。なぜなら、実質的には不法行為等にあたるため。
●891条5号の趣旨は、遺言に対する不当な干渉に対して相続人資格喪失という民事上の制裁を与えるもの。よって、「破棄」等は、不当な利益を目的とするものに限られる。
●共同相続した賃貸不動産の賃料債権の帰属と遺産分割の効力●検討
●排除された者に特定財産を「与える」遺言の解釈●司法平成30年
●包括承継(896条)、相続による共有関係(898条)
●911条:共同相続人間の担保責任:「相続分に応じて」とは、相続人間の公平を確保する同条の趣旨に照らし、取得すべき財産の価値に基づくと解される。
「相続させる」旨の遺言
●問題:特定財産承継遺言(1014条2項)
●趣旨:遺言者の合理的意思
●理由:当然相続する相続人につき、特に「相続させる」旨の遺言をしている点につき遺言者の合理的意思解釈
●結論:特段の事情のない限り、遺産分割方法の指定と解される。
●理由:遺言者の合理的意思。また、処分行為たる性質を有している。
●結論:特段の事情がない限り、被相続人死亡時に直ちに承継される。
●歯止:法定相続分を超える部分については対抗要件を要する(899条の2)。
●問題:代襲相続(887条2項)
●理由:遺言者の合理的意思(法的性質は通常の相続同様であることから、認められるとも考えられるが)
●結論:特段の事情のない限り、推定相続人が遺言者よりも先に死亡した場合、遺言の効力は消滅する。
遺留分侵害額請求権の代位行使(423条)
●問題:「債務者の一身に専属する権利」(423条1項ただし書)該当性
●趣旨:債務者の人格に対する不当な干渉を排除する。
●展開:この点、(1)遺留分制度は、相続人の財産処分の自由を尊重する一方、その侵害の場合の回復を相続人の意思に委ねている(1046条1項等)。
●理由:また、(2)相続人による相続や遺産の内容は将来における不確実な事項であり、相続人の債権者はそもそも遺産からの回収に期待できない。
●帰結:遺留分侵害額請求権は、「債務者の一身に専属する権利」に該当し、特段の事情がない限り、債権者代位権の目的とはならないと解される。