親族(知識・争点)

●全体

●内縁の場合、合意による解消であれば財産分与に関する規定(768条)が準用されるが、死亡による場合は準用されない(判例)。批判あり。
●「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」4条1項:性別の取扱いの変更の審判→他に性別に変わったものとみなす。よって、女→男に転換した者が女と婚姻し、第三者提供精子による人工授精により当該婚姻中に女が懐胎した子は、その男の子と推定される(772条)。要するに、民法は、親子関係について、血縁上・法律上の一致を必ずしも求めていない。

●子の引渡執行

●令和元年改正:1つの視点(子の心身への負担を最小限に。債務者の心情にも配慮。)
●間接強制のみか?直接強制・代替執行も可能か。
→直接的な強制執行(民執法174条1項1号)新設。実体法ではなく手続法的観点から。
①同時存在原則(民執法140条3項)の不適用。
②債権者の出頭
③債権者に代わり子の引渡しを受ける者の出頭(民執法175条6項)
●執行場所・執行官の権限:原則債務者の占有する場所(民執法175条1項柱書)。例外(同2・3・4項)他の場所。債務者を説得(同1項柱書)が特に重要な権限。
●間接強制との関係
①間接強制前置(実施法136条)から:債権者はいずれかを選択へ(民執法174条1項)
②申立て要件:必要性・相当性:間接強制判決確定日から2週間経過後(民執法174条2項1号)、間接強制を実施しても見込みなし(同2号)、子の急迫の危険防止(同3号)
③申立て手続:債務者の審尋(民執法174条1項1号・3項)。例外:同3項ただし書き(上記174条2項3号の場合など)。
●心身への有害な影響への配慮の必要性(民執法176条)は注意規定

●婚姻・離婚

●重度の精神病により後見人(妻ではない)が付された夫との離婚:調停離婚できず。後見人は身分行為の代理できず。裁判離婚しかない。被告は後見人(人訴法14条)。離婚の拒否は非常に難しい問題。
●婚姻の効果:1.当事者間(夫婦同氏(750条)、配偶者相続権(890条)、同居・協力・扶助義務(752条)、成年擬制(753条))、2.当事者以外の者との間(姻族関係発生(728条参照):扶養義務(877条2項、725条)、近親婚禁止(734条、735条))、準正(789条1項)
●離婚の無効原因:意思の欠缺(形式的意思説(最判昭和57年3月26日))。●理解:婚姻については、実質的意思説(最判昭和44年10月31日)
●離婚に際しての親権者指定において父母の面会交流についての意向が他諸事情より重要性が高いとはいえない(最決平成29年7月12日)。
●財産分与(判例・学説):清算・扶養・慰謝料の3つ。分与には、別居期間中の得べかりし生活費も含む。離婚後の扶養は政策的性質(扶助義務等なし)。判例も補充的に考慮するに止まる。
●2007年4月~:年金分割の制度が導入された(厚生年金保険法78条の2以下)。上限50%。なお、財産分与とは別。

日常家事債務

●事例:夫が妻を代理
●原則:効果帰属しない(夫婦別産制(762条1項))
●問題:「日常の家事」(761条本文)
●趣旨:夫婦の共同生活の円滑
●帰結:代理権まで付与した。
●定義:夫婦が共同生活を営む上で通常必要とされる法律行為。職業・資産・収入・目的(●確認)等の客観的・主観的(●確認)事情に基づき判断。●判例:最判昭和44年12月18日を。
●あてはめ:●非該当
●歯止:他方、第三者の取引安全を図る必要がある。
●反対利益:しかし、761条本文規定の権利を基本代理権として、110条類推適用することは、相手方の信頼に正当事由あれば足りることとなり、夫婦別産制(762条1項)をあまりに害する。
●帰結:そこで、相手方が当該行為が夫婦の日常家事債務の範囲内であると信ずるにつき正当の理由がある場合に限り、110条類推適用。
●認識:代理権がある、と信じるだけではだめだということ。認められるは厳しい、らしい。
●事例:夫が妻を代理
●問題:「日常の家事」(761条)
●趣旨:夫婦の共同生活の円滑
●帰結:代理権まで付与した。
●定義:夫婦が共同生活を営む上で必要とされる一切の事務。具体的には、社会的地位・職業・資産・収入等を考慮し、客観的に決定。
●反対利益:しかし、761条本文規定の権利を基本代理権として、110条類推適用することは、夫婦別産制(762条1項)を害する。
●歯止:他方、第三者の取引安全を図る必要がある。
●帰結:そこで、相手方が当該行為が夫婦の日常家事債務の範囲内であると信ずるにつき正当の理由がある場合には、110条類推適用。
●認識:代理権がある、と信じるだけではだめだということ。

財産分与・慰謝料と詐害行為取消権(424条)

●問題:「財産権を目的としない行為」(424条2項)とは言えないものの、768条3項との調整が必要。
●趣旨:家族法上の権利行使・義務履行である。
●結論:原則として、詐害行為該当性否定(424条の3参照)。
●修正:もっとも、768条3項の趣旨に照らし不相当に過大で、財産分与に仮託されたと認められる特段の事情がない限りで。
●補足:清算は比較的明確、扶養は難しい。慰謝料についても、本来負担すべき額を超える部分については、詐害行為取消可能。

●親子・親権・後見等

●離婚に際しての親権者指定において父母の面会交流についての意向が他諸事情より重要性が高いとはいえない(最決平成29年7月12日)。
●連れ去られた子の取戻し:監護に関する処分(766条2項・3項)。審判前の保全処分(家事法105条)。間接強制・直接強制両方がある(民執法174条1項各号)。
●内縁関係が先行している場合、内縁の夫の子を妻が懐胎し、婚姻後200日経過前に出生したときは、推定されない嫡出子(の例)。戸籍窓口では嫡出子扱い(内縁先行など知らん。)。なお、自発的に非嫡出子として届出することは可能。その場合、要認知。推定されない嫡出子の場合、親子関係不存在確認の訴えによることが可能ゆえ親子関係が不安定となる。
●嫡出否認の訴え(774条、人訴法41条)。命名・出生届は「承認」(776条)ではないと解されている。1年(777条)が経過した場合、自然的事実として他の男が父であることが明らかであっても、嫡出否認は認められない。身分関係の法的安定のため。ただ、立法論としては、現在、母(真実を知っているはず)・子(最大の利害関係者)に嫡出否認権を付与すること等につき審議中。
●収監中は「推定の及ばない子」ゆえ親子関係不存在確認の訴え(人訴法2条2号(?))。注意:同居しているがDNA観点から明らか、は、違う。原則通り推定される。
●「300日問題」→「無戸籍児」問題。次のパートナーの子を出産し婚姻しても、前夫から嫡出否認の協力が得られるとは限らず、そもそも会いたくないので出生届せず。
●母の認知、に関する条文(779条等)は空文化している。原則として母子関係は分娩の事実により当然発生するので。●確認:例外なし。●認識:現時点では追求不要。●「好意認知」(自らの子でないと知りつつする認知。子連れ女性と婚姻するに際しが多い。)。でも認知無効の訴えは許される。●認識:事実を尊重
●単独親権(818条3項、819条1項)ゆえ奪い合いが生じやすい。親権者の変更(819条6項)・監護権者の指定(766条2項)による。
●人身保護法:沿革的には国家権力からの保護だが、迅速・実効的ゆえ監護に係る紛争でも多用。迅速性(6条)・実効性(12条)あり。しかし、判例は限定(裁判不服従又はこの福祉が著しく損なわれる場合など)。
●「親権(820条)」●マイナス3点セット:①喪失(834条)、②停止(834条の2)、③財産管理権喪失(835条)
●親権停止の審判前の緊急の場合、当該審判を本案とし、職務執行の停止・代行者の選任の保全処分(家事174条)。それでも間に合わなさそうなら、児童相談所長等による監護措置も可能(児童福祉法33条の2第4項、47条5項)。
●親権者指定に際し、子が15歳以上の場合、子の陳述を聴く必要がある(家事法169条2項)。
●監護権者を定めた場合、監護権者が看護教育を、親権者が財産管理を、各々分担すると解されている。が、ヤヤコシイので実務上は慎重な立場。
●単独親権者が死亡した場合、他方の親が適任であれば、親権者変更の申立てをしうる(後見人の有無を問わず)というのが近時多数。死亡した単独親権者が遺言で未成年後見人を指定していた場合でも、という裁判例あり。
●包括的代理権(824条)を基本代理権として表見代理を論じることは不適切。
●後見人の代表権(859条1項)。
●専ら相続税節税目的で養子縁組をしても、直ちに縁組意思(802条1号)がないとは言えない(最判平成29年1月31日)。
●離婚に際しての親権者指定において父母の面会交流についての意向が他諸事情より重要性が高いとはいえない(最決平成29年7月12日)。
●連れ去られた子の取戻し:監護に関する処分(766条2項・3項)。審判前の保全処分(家事法105条)。間接強制・直接強制両方がある(民執法174条1項各号)。
●内縁関係が先行している場合、内縁の夫の子を妻が懐胎し、婚姻後200日経過前に出生したときは、推定されない嫡出子(の例)。戸籍窓口では嫡出子扱い(内縁先行など知らん。)。なお、自発的に非嫡出子として届出することは可能。その場合、要認知。推定されない嫡出子の場合、親子関係不存在確認の訴えによることが可能ゆえ親子関係が不安定となる。
●嫡出否認の訴え(774条、人訴法41条)。命名・出生届は「承認」(776条)ではないと解されている。1年(777条)が経過した場合、自然的事実として他の男が父であることが明らかであっても、嫡出否認は認められない。身分関係の法的安定のため。ただ、立法論としては、現在、母(真実を知っているはず)・子(最大の利害関係者)に嫡出否認権を付与すること等につき審議中。
●収監中は「推定の及ばない子」ゆえ親子関係不存在確認の訴え(人訴法2条2号(?))。注意:同居しているがDNA観点から明らか、は、違う。原則通り推定される。
●「300日問題」→「無戸籍児」問題。次のパートナーの子を出産し婚姻しても、前夫から嫡出否認の協力が得られるとは限らず、そもそも会いたくないので出生届せず。
●母の認知、に関する条文(779条等)は空文化している。原則として母子関係は分娩の事実により当然発生するので。●確認:例外なし。●認識:現時点では追求不要。
●死後認知では検察官が被告(人訴法42条1項)
●児童相談所長等による(児童福祉法33条の6)特別養子適格確認請求審判事件(家事法164条2項)→縁組成立審判事件。父が育てる意思を有する場合、子の利益を著しく害する等の特段の事情がない限り、特別養子縁組不可(裁判例)。
●特別養子縁組についての同意の撤回には制限あり(家事法164条の2第5項、239条2項)。が、撤回可能な場合もある(同164条の2第5項1号、239条2項)。

(財産の管理及び代表)
第八百二十四条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人(子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

利益相反

●事例:親が子を代理
●問題:「利益が相反する行為」(826条1項)(該当すれば、無権代理となり、本人には効果帰属しない)
●趣旨:原則として包括的代理権あり(824条本文)。それを子の利益保護の観点から権限。しかし、取引の相手方を保護する必要性もある。そこで、子の利益保護と取引の安全との調和の見地から、
●結論:その該当性は、行為を外形的・客観的に見て判断すべき。
●注意:これ自体は改正の影響なし

●問題:利益相反行為にあたらない場合(法定代理権の濫用)
●要件:親権者に対し子を代理する権限を付与した法の趣旨に著しく反する特段の事情がない限り、
●結論:権限濫用による無権代理(107条、113条1項)とはならない。
●条文:債権法改正により、107条か否かに収斂。●108条2項も新設されたので指摘する。

●参考:親権喪失の審判(834条)、親権停止の審判(834条の2)

●扶養

●三親等に負担させるのは要件厳しい(裁判例あり)。立法論として廃止論も。●認識:常識的
●扶養義務は、現実の生活を確保するもの。その義務は絶対的定期債務性を有する。負担した者が、していない者に対し請求できるか。問題となる。●認識:要するに、今は扶養不要(はい?)だし、請求されてもそもそも義務なくないか。ということなのだろうが。不当利得等で行ける、と考えるのが自然ではないか。

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